今回は Cinelli の KING ZYDECO のペイントリペアをご依頼いただきました。
BBシェルの右側面から右チェーンステーにかけてチェーン落ちで傷ついています。
フレーム素材のカーボンが露出する深めの傷ですが、カーボン自体にダメージは無さそうです。
作業工程
調色
まずは使用するカラーの調色を行います。
調色するカラーは、メインカラーのターコイズブルー。
チェーンステーの太いラインで使われているダークブルーグリーン。
チェーンステーの細い2本のラインで使われているライトグリーンとブルー。
以上の4色です。
メインカラー以外はデカールの印刷カラーなので、それを考慮して塗装で再現できるように調色します。
塗料の原色表とフレームカラーを見比べて、調色する上で軸となる色を決め、そこに数色の塗料を加えて調色を行います。
ある程度色が決まると、実際にカラーサンプル用紙に塗装して微調整します。
チェーンステーの細いラインに使用されている2色は隠蔽力が弱いカラーなので、下地のカラーや塗装回数も考慮して調色します。
マスキング
作業に入る前に塗装を行わない部分はコロナシートで覆ってしまい、塗料やその他の汚れが付着しないようにマスキングします。
塗装の際は更にこの上にマスカ―でマスキングするので、その分を考慮して塗装範囲を広めにとります。
足付け作業
足付けは細目の番手のスコッチブライトに足付け用のコンパウントを付けて行います。
この作業は非常に重要で、足付けが上手く出来ていないと最終工程のポリッシング作業でボカシ際が出てきてしまいます。
足付け作業の後はコンパウンド等を綺麗に洗浄し、シリコンオフで拭いて脱脂します。
パテ処理
続いての工程は、傷を埋めるパテ処理を行います。
まずは傷周りを少し粗目の研磨布で足付け作業をします。
次にリューターで傷の際を削って傷の形を整えます。
剥離して浮いてしまっている塗装がある場合は、それも削り取ってしまいます。
削る事で傷は広がってしまいますが、浮いた塗装をそのままに傷をパテで埋めて塗装した場合、後から気泡の発生等のトラブルが起こってしまいます。
傷の下処理後は削り粉を綺麗にしてパテを盛ります。
一度に厚くは盛らず、傷が深い箇所には数回に分けてパテを盛り傷を埋めます。
今回はUV硬化パテを使用しました。
UV硬化パテはUVライトを当てると数十秒で硬化するので、すぐにサンドペーパー等で削って整形します。
下地塗装
傷が埋まったら下地塗装の作業に入ります。
サーフェイサーの塗装範囲は出来る限り小さくしたいので、サーフェイサー塗装用のマスキングをします。
塗装するサーフェイサーは、この後に塗装するカラーに似せて調色した物を塗装します。
塗装したサーフェイサーが硬化したら600~800番程度の研磨布で平滑に均して下地の完成です。
カラー塗装
カラーの塗装はメインカラーであるターコイズブルーから塗装します。
メインカラーの塗装範囲に合わせたマスキングをして、塗装範囲を広げないように塗装していきます。
塗装したターコイズブルーが硬化したらチェーンステーのラインを塗装します。
塗分け塗装は隠蔽力の弱いライトグリーンから、ブルー、最後にダークブルーグリーンの順番で塗装します
いきなり隠蔽力の弱いライトグリーンとブルーを塗装しても目的の発色はしないので、下地にホワイトを塗装します。
ライトグリーンは塗装回数が少なくても多くても目的のカラーにはならないので、作成した色見本と同じになる様に、薄く塗装して少しずつ目的のカラーにしていきます。
塗装したライトグリーン部分をマスキングしたら、ブルーを同じように塗装します。
ブルーの次はダークブルーグリーンを塗装します。
チェーンステーのロゴには予めマスキングしておきます。
このサイズのロゴは無色のマスキングシールを大きく貼付してからフリーハンドでカットしてマスキングします。
ここのカラーは他のカラーの塗装と少し違い、ダークブルーグリーンのカラーを塗装してからターコイズブルーをパラパラと微細な点々ができるように塗装して完成します。
塗分け用のマスキングを全て剥がしたら上塗りクリヤーを塗装して塗装は完了です。
磨き作業
塗装が硬化したら最後の工程の磨き作業です。
まずは1500~3000番の研磨布を使用して、塗分け際やホコリによる塗装の凹凸を平滑に均します。
続いてシングルポリッシャーと、少し粗目のコンパウンドで一度目のポリッシング。
次にダブルアクションと細目のコンパウンドで2度目のポリッシング。
最後に仕上げ用のコンパウンドで磨いてマスキングを全て剥がせば完成です。