今回は SCOTT のカーボンロードバイクフレーム ADDICT の塗装をご依頼いただきました。
こちらのフレームとシートポストを、ポルシェのカラー「ジェットブラック」と「GTシルバーメタリック」で PINARELLO DOGMA プルトニウムフラッシュカラーの様な感じに塗装したいとのご依頼でした。
作業工程
ロゴデータ作成
まずはロゴのデータ作成から開始します。
データを作るロゴは、ダウンチューブの大きなSCOTT、シートチューブのDDICT、ヘッドチューブのロゴマークです。
自転車のフレームのロゴはモデル名や年式による違いは勿論ですが、ブランド名やマークも縦横比や角度等を調節している事が多いので、塗装前後で同じロゴを再現する場合はロゴのデータを新たに作り直すことが多いです。
ロゴを撮影した写真をPCに取り込み、カメラレンズの歪みとフレーム形状による歪みを一文字ずつ修正します。
ある程度形になったらトレーシングペーパーに印刷して現物に重ね、合っていない箇所は再度修正と、数回の修正を重ねてロゴのデータを作成します。
塗装剥離
ロゴのデータ作成の次は塗装の剥離を行っていきます。
カーボン素材の場合、薬品による塗装剥離を行うとカーボンにまでダメージを与えてしまうので、サンドペーパー等の道具を使用して少しずつ塗装を削り取ります。
カーボン素材は金属とは違い、表面が波打っていたり細かな凹凸が多数にあり、平面になっている部分は基本的にありません。
なので、塗装を削っていくと塗装の残る部分とカーボン地が出る部分が出来て斑模様になります。
凹凸が大きい部分はカラーまで残り、比較的滑らかな部分はプライマーが残る状態になります。
塗装剥離後は削った塗装の粉がフレーム内部にも入り込んでしまっており、塗装時にスプレーガンの風圧でフレーム内部から粉が出てきて塗装が台無しになってしまいます。
そうならないようにフレーム内部も洗剤と水で洗い流します。
洗浄後はエアブローで水分を吹き飛ばしてから強制乾燥させて塗装剥離は完了です。
下地塗装
塗装が剥離出来たら下地塗料を塗装します。
フレーム内部や塗装したくない部分には予めマスキングして塗料が付着しないようにします。
下地塗装は最初にプライマーを塗装し、続いてサーフェイサーを塗装します。
今回のカラーはシルバーメタリックとブラックなので、サーフェイサーのカラーは明るめのグレーに調色した物を使用しました。
フレームが一色に塗装されると塗装剥離後の斑模様状態では判別できていなかった凹凸や巣穴等が良く見える様になります。
そういった部分を一つずつ見つけてはサンドペーパーで削ったりパテを盛って平滑に仕上げます。
パテを盛ったりサンディングでカーボンが透けて見えるようになった部分には、サーフェイサーを再度塗装します。
ここで如何に滑らかな状態にするかで最終的な仕上がりに差が出てきます。
カラー塗装
今回のフレームに使用するカラーはポルシェの「GTシルバーメタリック」と「ジェットブラック」です。
GTシルバーメタリックは細目のメタリックを使用した若干青黒いメタリックカラーで、ジェットブラックはブラックの中に少量のメタリックとブルーパールが入ったカラーです。
この2色をグラデーションで塗分け塗装します。
まずはGTシルバーメタリックから塗装します。
メタリックカラーですが粒子の細かいメタリックなので、隠蔽力はそれ程弱くありません。
続いてメタリックを塗装した部分にクリヤーを塗装します。
次のジェットブラックを塗装した際に塗装が溶けないように、ここでしっかりと強制乾燥させて硬化させます。
続いてジェットブラックを塗装します。
そのまま塗装するとメタリック部分にもブラックが掛かってしまうので、まずは通常の塗分けの様にメタリックを残す部分にマスキングをしてからブラックを塗装します。
塗分け部分以外が塗装出来たらマスキングを剥がし、エラーブラシを使用して塗分け部分のグラデーションを塗装します。
2色の塗分け塗装ができたらクリヤーを薄く塗装してメインカラーの塗装は完了です。
ロゴ塗装
メインカラーの塗装が硬化したらロゴ塗装を行います。
最初に作っておいたロゴデータを使用してカッティングプロッターでマスキングシートをロゴの形状にカットし、ロゴ塗装用のマスキングシールを作成します。
指定の位置にマスキングシールを貼ったら、それ以外の部分に塗料が付着しないようにマスキングで覆います。
ロゴが塗装できたらマスキングを剥がし、全体に上塗り用のクリヤーを塗装して塗装完了です。
ポリッシング~完成
塗装完了後は60℃で数十分ほど強制乾燥させます。
強制乾燥させてから数日立つと塗装も落ち着くので、仕上げのポリッシング作業に入ります。
まずは1500~3000番の研磨布でロゴの段差や塗装肌を平滑にし、粗目のコンパウンドとシングルポリッシャーで1回目の磨きを行います。
続いて中目のコンパウンドとダブルアクションで磨き、最後に仕上げ用のコンパウンドで磨いて完成です。