今回は FACTOR OSTRO のペイントリペアをご依頼いただきました。
シートチューブとシートステーの傷を補修塗装したいとのご依頼でした。
シートチューブの傷は複雑な形状のロゴが近い上に、グラデーション部分が傷ついています。
広範囲というわけではありませんが、傷数は多く、カーボンが見えるほど深い傷もあります。
「S」の文字の傷は今回はリペア行いません。
シートステーの傷は浅くグラデーション位置からもギリギリ外れています。
作業工程
下準備~パテ埋め
お預かりしたフレームの作業前の写真を撮り終えたら、まずは塗装する範囲を洗浄し、塗装範囲外の部分を養生マスキングします。
塗装範囲にあるボルトを外し、ステッカーも剥がしてしまいます。
ステッカーは再利用可能な場合と不可能な場合があります。
今回の場合、ノリは全てフレーム側に残りましたが、ステッカー自体は綺麗な状態で剥がせたので、塗装完了後に再利用する事ができました。
続いて傷周りの下処理をしてからパテを盛って成形します。
今回のような少し深めの傷の場合、パテの種類にもよりますが、一度のパテで埋めようとはせず、数回に分けるようにして埋めて成形します。
下地塗装~調色
パテで傷を埋めて成形ができたら、塗装範囲の足付け作業を行います。
足付けができたらサーフェイサーを塗装するのですが、傷の位置がロゴに近いので、ロゴを大まかにマスキングしてから塗装します。
サーフェイサーはホワイトを使用し、イエローを少し混ぜた物を塗装します。
塗装したサーフェイサーが硬化したら研磨布で均して下地の完成です。
続いてカラーの調色を行います。
まずはソリッドカラーのアイボリーを調色します。
今回はロゴの形状が複雑な事もあり、精度高めに調色します。
ある程度までは調色時に使用するヘラで紙に塗料を付けてフレームのカラーに近付けていきます。
微調整は調色用の紙に実際に塗装して近づけていきます。
アイボリーカラーには5色程の塗料を使用して調色しました。
続いて2色目のパールカラーの調色をします。
まずはフレームのカラーをよく見て、一番含有量の多そうな塗料の粒子サイズとカラーを選びます。
今回は着色パールのレッドから選びました。
続いて干渉パールのイエロー、ピンク、バイオレットを加えて調色します。
こういったパールカラーやメタリックカラーの調色は、塗料の種類を多く所持していなくては調色する事が出来ません。
自分で塗料の粒子サイズを変更する事は不可能なので、カラーに合う粒子サイズの塗料を所持している必要があります。
ロゴマスキング~カラー塗装
今回のリペアペイントで一番時間の掛かった作業はロゴのマスキングです。
かなり細い線で構成されたロゴなので、慎重に作業をしなければなりませんでした。
ロゴが入るサイズの透明のマスキングシールを貼り、クラフトナイフでロゴの線に沿ってカットしていきます。
力を入れ過ぎるとフレームに傷が入ってしまうので、力加減に注意して作業します。
まずは文字の外側に沿ってカットし、それから細い線にカットしていきます。
ロゴのマスキングが出来たらカラーの塗装に入ります。
まずはアイボリーカラーから塗装します。
塗装する範囲ですが、かなり精度高めに調色したので、フレーム上部のアイボリー側は狭い範囲でぼかします。
フレーム下部のBBシェル側にはグラデーション部分が無くなる部分までアイボリーで塗りつぶします。
傷に対して塗装範囲がかなり広くなってしまいますが、今回のようなカラーのグラデーション塗装の補修塗装を行うにはしようがありません。
アイボリーカラーの塗装が出来たらすぐにパール塗装はせず、一度クリヤーを塗装して完全に硬化させてしまいます。
一度クリヤーを挟むことで、パールのグラデーション塗装で何かトラブルが起こってもやり直しができる事になります。
クリヤーが硬化したら足付けをし、パールのグラデーション塗装をします。
塗装したパールが硬化したらロゴのマスキングを剥がし、トップクリヤーを塗装します。
ロゴのマスキングを剥がすと塗膜の差により段差が出来てしまうので、ロゴ部分には少し厚めにクリヤーを塗装します。
クリヤーが硬化したら研磨布でロゴの段差と塗装肌を均し、ポリッシャーで磨きます。
最後にマスキングを剥がしたらペイントリペアの完了です。